脳性麻痺に関する産科医療補償制度の補償申請について

補償対象基準に関する参考事例

(1)一般審査の基準

【参考事例 — 1】

在胎週数39週、出生体重3300g。分娩経過は特に異常はなく、出生時に新生児仮死は認めず、臍帯動脈血のpH値は7.25であった。入院中の小児科診察では異常はなく退院した。1ヶ月健診時に著明な頭囲発育不良を認めたため、頭部CTを施行したところ多嚢胞性脳軟化症を認めた。明らかな先天性の要因、新生児期の要因は認めないことから、除外基準には該当しないと判断され、補償対象とされた。

【参考事例 — 2】

在胎週数38週、出生体重3000g。出生時に新生児仮死は認めなかった。1ヶ月健診時に体重増加不良を認め、以降のフォローアップの経過において発達遅滞を認めた。生後6ヶ月頃に軽度のてんかんを発症した。てんかんについてはコントロールされており、重度の運動障害の主な原因とは言えないと判断された。また、脳性麻痺の発症時期は特定できず、遺伝子検査でも異常は認められなかった。また、奇形等の所見もなく、明らかな先天性の要因、新生児期の要因は認めないことから、除外基準には該当しないと判断され、補償対象とされた。

ポイント!

産科医療補償制度では一般審査の基準を満たしていて、先天性や新生児期の要因によらない脳性麻痺である場合(除外基準に該当しない場合)は、「分娩に関連した」と取り扱っています。したがって、一般審査の基準を満たしている児については、除外基準に該当せず、重症度の基準を満たしている場合は、分娩時の低酸素状況の有無にかかわらず、一律補償対象となります。


(2)個別審査の基準(2009年1月1日以降に出生した児の事例)

【参考事例 — 3】

在胎週数31週、出生体重1800g。母が胎動減少を感じていた。胎児心拍数モニターおよびエコー所見よりNRFSと診断され、緊急帝王切開で出生した。新生児仮死を認めた。補償対象基準の二-(二)に記載されている前置胎盤、常位胎盤早期剥離、子宮破裂、子癇、臍帯脱出等の具体的な病態までは特定できなかったが、胎児心拍数モニターでは、心拍数基線細変動の消失および子宮収縮の50%以上に出現する変動一過性徐脈を認め、臍帯圧迫等の突発的な病態があったと考えられることから、補償対象基準(個別審査の基準)を満たしていると判断された。

ポイント!

分娩時に低酸素状況を引き起こした具体的な病態が明確でない(特定できない)場合でも、所定の胎児心拍数パターンが認められ、かつ突発的に胎児の低酸素状況を引き起こす病態(本事例においては臍帯圧迫)があったと審査委員会において判断されるときは、補償対象基準(個別審査の基準)を満たします。


【参考事例 — 4】

在胎週数31週、出生体重1700g。自宅で規則的な子宮収縮があり、救急車を要請した。分娩兆候を認めたため、救急隊が医師の電話指示に従って分娩介助し(分娩機関管理下)、児を娩出した。胎児心拍数モニターは施行できず、臍帯動脈血採取もできなかったが、救急隊が記録した処置などから胎児が低酸素状態となっていたことが示唆され、またNICU入院時の児の血液ガス分析においてpH値6.7台と重度のアシドーシスが認められたことから、分娩中に所定の低酸素状況が生じていたことは明らかであり、補償対象基準(個別審査の基準)を満たしていると判断された。

【参考事例 — 5】 — 2012年出生のため当該年出生児に適用される個別審査の基準で審査

在胎週数34週、出生体重1900g。自然破水後の内診で臍帯脱出を認め、腹部エコーでは児心音聴取できず、緊急帝王切開で出生した。アプガースコアは1分値0点、5分値1点であった。臍帯動脈血ガス分析は未実施であった。胎児心拍数モニター、臍帯動脈血ガス分析は実施していないが、これらのデータが取得できなかったことは緊急性に鑑みると合理的と認められ、かつ胎児に突発的に低酸素状況が生じていたことが診療録等から明らかであり、データを取得できていれば補償対象基準を満たす蓋然性が極めて高いと考えられ、補償対象基準(個別審査の基準)を満たしていると判断された。

ポイント!

分娩時の低酸素状況を証明するデータがない場合は原則として補償対象外となりますが、①緊急性等に照らして考えると、データが取得できなかったことにやむを得ない合理的な事情があり、②診療録等から、胎児に突発的な低酸素状況が生じたことが明らかであると考えられ、③仮にデータを取得できていれば、明らかに補償対象基準を満たしていたと考えられる(補償対象基準を満たしていた高度の蓋然性がある)場合には、補償対象基準(個別審査の基準)を満たします。
 なお【参考事例 — 5】については、2015年1月1日以降に出生した児であった場合は、在胎週数および出生体重より一般審査の基準が適用されることになります。


【参考事例 — 6】 — 2011年出生のため、当該年出生児に適用される個別審査の基準で審査

在胎週数31週、出生体重1300g。胎動減少の自覚があり受診した後、胎児機能不全の診断のため緊急帝王切開で出生した。臍帯動脈血のpH値は7.20であり、分娩前の胎児心拍数モニターにおいて補償対象基準二-(二)に該当する胎児心拍数パターンは認められないと考えるものの、明らかな徐脈が確認できなくとも胎児機能不全と判断できる事例であったとして補償申請された。審査委員会による分娩前の胎児心拍数モニターの判読では、心拍数基線細変動の消失を認め、一過性徐脈と判断できる部分が複数箇所あることから、補償対象基準二-(二)-(ロ)または(ハ)に該当する胎児心拍数パターンを認めるとされ、補償対象基準(個別審査の基準)を満たしていると判断された。

ポイント!

胎児心拍数モニターにおいて所定の波形パターンを認めるかどうかの最終的な判断は、審査委員会において行います。上記事例のように胎児機能不全と判断されるが、所定の波形パターンを認めるかどうかの判断が難しい事例などは、補償申請をしていただくようお願いいたします。
 なお【参考事例 — 6】については、2015年1月1日以降に出生した児であった場合は基準が変更となっていますので、「心拍数基線細変動の消失」のみでも補償対象基準(個別審査の基準)を満たします。


●個別審査の基準を満たさないと判断された事例


【参考事例 — 7】 — 2012年出生のため、当該年出生児に適用される個別審査の基準で審査

在胎週数31週、出生体重1500g。一絨毛膜二羊膜双胎の受血児。在胎週数27週頃より双胎間の体重差を認め管理目的で入院となる。在胎週数31週のTTTSスコアは3点であった。胎児心拍数モニターにおいて本児(受血児)には胎児心拍数異常は認めなかったが、他児(供血児)に変動一過性徐脈が散見されたことから、緊急帝王切開となった。アプガースコアは1分値8点、5分値9点、臍帯動脈血のpH値は7.31であった。本児は臍帯動脈血のpH値および胎児心拍数モニターにおいて補償対象基準(個別審査の基準)を満たさないことから、補償対象外とされた。

【参考事例 — 8】 — 2013年出生のため、当該年出生児に適用される個別審査の基準で審査

在胎週数31週、出生体重1600g。前置胎盤のため管理入院していたが、外出血を認めたため緊急帝王切開で出生した。アプガースコアは1分値7点、5分値8点。臍帯動脈血のpH値は7.29であり、帝王切開前の胎児心拍数モニターは基線細変動の消失は認められず、所定の胎児心拍数パターンも認められないことから、補償対象基準(個別審査の基準)を満たさないとして補償対象外とされた。

ポイント!

個別審査の基準を適用して審査を行う場合は、分娩時の低酸素状況について、所定の基準を満たす必要があり、これが認められない場合は補償対象外となります。


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